児童相談所の一時保護とは│児相での生活と家庭復帰までの流れ
児童相談所による「一時保護」は、児童虐待や養育困難などの状況から子どもを救助し、生命や心身の安全を守る制度です。
しかし、保護者にとっては突然子どもと引き離されるケースもあり、大きな不安や混乱を感じる方もいるでしょう。不安な思いのまま、児童相談所に感情的な対応をすると、家庭復帰が遠のいてしまうおそれがあります。
今回は、児童相談所の一時保護から家庭復帰までの流れ、弁護士ができる具体的なサポート内容などについて解説します。
1、児童相談所(児相)の一時保護とは
児童相談所の一時保護とは、子どもの生命や身体の安全を守るため、緊急的に子どもを保護する制度であり、あくまで一時的な措置として位置づけられています。
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(1)一時保護は子どもの生命・身体の安全を確保する制度
一時保護は、児童福祉法33条に基づいて行われる制度で、児童相談所長または都道府県知事が必要と判断した場合に実施されます。
具体的には、以下のようなケースで一時保護が検討されます。- 児童虐待の疑いがあり、子どもが危険な状態にある
- 保護者が不在、または養育能力を著しく欠いている
- 家庭内のトラブルが激しく、子どもの心身に悪影響が及んでいる
あくまで子どもの安全を最優先にし、落ち着いた環境で状況を整理するための制度です。保護期間は原則2か月となっています。
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(2)児童相談所への虐待相談対応件数は増加傾向にある
近年、児童虐待に関する相談件数は増加を続けています。
以下の子ども家庭庁の公表資料によると、平成24年度から令和5年度まで相談件数は3倍以上に増加しています。年度 件数 平成24年度 6万6701件 平成25年度 7万3802件 平成26年度 8万8931件 平成27年度 10万3286件 平成28年度 12万2575件 平成29年度 13万3778件 平成30年度 15万9838件 令和元年度 19万3780件 令和2年度 20万5044件 令和3年度 20万7660件 令和4年度 21万4843件 令和5年度 22万5509件 参考:「令和5年度 児童相談所における児童虐待相談対応件数」(こども家庭庁)
相談件数の増加は、児童虐待そのものが増えたという側面だけでなく、通告制度の浸透や社会的関心の高まりも背景にあります。 -
(3)令和7年4月に成立した改正児童福祉法における一時保護のポイント
令和7年4月に成立した改正児童福祉法では、児童虐待防止の観点から、一時保護に関する制度が見直されました。
主な改正ポイントは、以下の2点です。① 一時保護委託先の登録制度の創設
改正法では、一時保護を行う委託先の質を確保するため、一定の基準を満たした施設のみが登録できる「登録一時保護委託者制度」が新たに設けられました。
児童虐待などで傷ついた子どもが安心して生活できるよう、適切な人員体制や支援体制を備えた施設のみが一時保護をする仕組みとなっています。
② 面会・通信制限に関する規定の整備
一時保護中の面会・通信制限について、児童虐待があった場合だけでなく、疑いがある場合でも、児童の心身に有害な影響を及ぼすおそれが大きいときは、保護者の同意なく制限できることが明確化されました。
また、面会等の制限は、子どもの意向を踏まえた判断が求められています。
2、一時保護の要件│どんなときに一時保護される?
児童相談所が一時保護を行うかどうかは、児童福祉法および「一時保護ガイドライン」に基づいて判断されます。一時保護はあくまで緊急的・例外的な措置であり、以下のような要件に該当する場合に実施されます。
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(1)適当な保護者や宿所(家)がない場合
保護者が病気や入院、失踪などにより養育できない場合や生活環境が著しく不安定で子どもの安全が確保できない場合には、一時保護が検討されます。
たとえば、以下のケースでは、子どもの安全確保を優先して一時保護が行われます。- 保護者が長期間不在(逮捕、服役、入院、失踪)で監護者がいない
- 子どもの迷子、家出
- 住居からの強制退去により住む場所が失われた
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(2)児童虐待(身体・心理・ネグレクト・性虐待)が疑われるとき
身体的虐待、心理的虐待、ネグレクト、性的虐待などが疑われる場合も、一時保護の対象となります。
重要なのは、児童虐待の事実があったと確定していなくても「疑い」があれば保護が可能である点です。これは、事実確認を待つ間に子どもの生命や心身に重大な被害が生じることを防ぐためです。
そのため、保護者が「身に覚えがない」と感じていても、一時的に子どもが保護されるケースがあります。 -
(3)家庭内暴力や自傷行為などの危険があるとき
家庭内で激しい夫婦げんかが繰り返されている場合や子ども自身に自傷行為・自殺念慮が見られる場合なども、一時保護の対象となります。
このようなケースでは、直接的な児童虐待がなくても、子どもの心身に重大な悪影響が及ぶおそれがあるとして、一時的に安全な環境へ移す必要があると判断されます。
3、一時保護の期間と子どもの生活
一時保護では一定期間、児童相談所や施設で生活することになります。
以下では、一時保護の期間や保護中の子どもの生活実態について説明します。
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(1)保護期間は原則2か月、平均32.7日
児童福祉法上、一時保護の期間は原則2か月以内とされています。
ただし、家庭環境の調査や今後の支援方針の検討に時間を要する場合には、やむを得ず延長されることもあります。
子ども家庭庁の資料によると、全国の一時保護所における平均在所日数は約32.7日とされており、1か月前後で解除されるケースが多いといえます。
ただしこれはあくまで全国平均値であり、最も平均在所日数が短い鳥取県では7.1日、最も平均在所日数が長い千葉県では75.5日と、地域差が顕著に見られる傾向にあるほか、個別のケースによって大きく変動する可能性があるため、参考程度に捉えておくのがよいでしょう。
参考:「4_参考資料_こども家庭庁虐待防止対策課」(こども家庭庁) -
(2)保護期間中の生活環境
一時保護中の子どもは、児童相談所の一時保護所や委託施設で生活しますが、多くの場合、学校への通学ができない状況に置かれます。
この点については、子どもの学習機会や社会的つながりが断たれるとして、以前から問題視されてきました。
このような状況を踏まえ、令和4年の児童福祉法改正により、一時保護などの措置を行う際には、児童の意見を確認することが義務付けられました。
これにより、「学校に通いたい」「友人と離れたくない」といった子どもの思いを把握し、支援や措置の判断に反映させることが制度上求められています。
もっとも、現実には安全確保を優先せざるを得ない場面も多く、通学や外出が制限されるケースも少なくありません。
そのため、一時保護中は学習支援や生活環境への配慮が重要とされており、子どもの心身への影響を最小限に抑える工夫が求められています。 -
(3)保護者との面会、電話・メール等の制限
一時保護中は、子どもの安全や心理的安定を優先するため、保護者との面会や電話、メール、SNSなどの連絡が制限されることがあります。
特に、児童虐待の疑いがある場合には、保護者からの影響や心理的圧力を避ける必要があるとして、面会や連絡が認められない、または制限される可能性があります。
4、一時保護~家庭復帰までの流れ
一時保護はあくまで一時的な措置であり、最終的には「家庭復帰」「施設入所」「継続的な支援」のいずれかに進むことになります。以下では、一時保護から家庭復帰までの一般的な流れを説明します。
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(1)児童虐待の通報(通告)
一時保護は、多くの場合、第三者からの通報(通告)をきっかけに始まります。通告者は、学校、保育園、医療機関、近隣住民などさまざまで、匿名の通報もあります。
通告を受けた児童相談所は、事実関係や緊急性の確認を行い、子どもの安全が脅かされていると判断した場合には、速やかに対応を開始します。 -
(2)一時保護
緊急性が高いと判断されると、児童相談所の判断で一時保護が行われます。
この段階では、裁判所の許可を待たずに保護が実施されることもあります(緊急一時保護)。緊急の保護であっても、児童相談所は保護開始から7日間以内に裁判所に一時保護状を請求し、裁判所の許可を得なくてはなりません。
一時保護中、子どもは、心身の安全確保のため、児童相談所の一時保護所や委託施設で生活することになります。 -
(3)児童相談所と保護者の面談
一時保護後、児童相談所は保護者と面談を行い、家庭環境や養育状況、これまでの経緯などについて調査を行います。
この面談で確認、調査されるのは主に以下の内容です。- 保護者の養育態度
- 生活環境の改善可能性
- 支援を受ける意思の有無
この段階での発言や対応が、その後の処遇方針に大きく影響します。弁護士のサポートを受けながら適切な主張をすることが大切です。
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(4)児童相談所が裁判所に一時保護状を請求
一時保護を継続する必要があると判断された場合、児童相談所は裁判所(地方裁判所・家庭裁判所・簡易裁判所のいずれか)に対して「一時保護状」を請求します。
裁判所は、資料や意見を踏まえ、保護の継続が相当かどうかを判断します。この段階では、保護者側が意見を述べる機会が設けられることもあり、弁護士が関与することで主張整理がしやすくなるでしょう。 -
(5)措置の決定(家庭復帰 / 施設入所 / 支援介入)
調査結果や裁判所の判断を踏まえ、以下のような方向性が決まります。
家庭復帰 家庭内の安全が確認でき、安心して養育できる環境が整っていると判断された場合は、子どもが家庭に戻ります。
ただし、家庭復帰後も一定期間は児童相談所による見守りや指導が続くことがあります。施設入所 家庭での養育が困難な場合、児童養護施設などに入所します。
たとえ保護者の同意が得られない場合でも、家庭裁判所の判断(※28条審判)により入所が決定されることがあります。在宅支援 子どもが家庭での生活を継続しながら、福祉サービスや指導を受ける形です。
保護者には、指導内容への協力や生活環境の改善が求められます。※28条審判:児童福祉法28条に基づき、施設入所の可否を家庭裁判所が判断する手続き
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(6)施設入所・支援介入になった場合
一時保護後、家庭での養育が難しいと判断された場合には、児童養護施設や里親家庭、または在宅での支援が行われます。
施設入所は、児童虐待の再発リスクが高い場合や、専門的なケアが必要な場合に選択されます。
一方、家庭での生活が可能と判断されれば、児童相談所による訪問指導や福祉サービスの利用など、在宅支援が行われます。
いずれも、子どもの安全と生活の安定を最優先にした支援です。 -
(7)一時保護解除(家庭復帰)となった場合
家庭環境が改善し、子どもの安全が確保できると児童相談所が判断すれば、一時保護は解除されます。
ただし、家庭復帰後も、再発防止のために一定期間の見守りや支援が続くのが一般的です。
一時保護の解除は支援の終了ではなく、子どもが安心して生活できる環境を整えるための新たな一歩といえます。
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弁護士にご相談ください
平日・土日祝ともに9:30〜18:00
※裁判所の審判により児童養護施設等への入所が決定している場合には、ご相談をお受けしておりません。
5、児童相談所の一時保護は弁護士に相談を
児童相談所による一時保護に疑問を感じたら、早い段階で弁護士に相談することが大切です。迅速な行動が円滑な解決につながるケースも少なくありません。
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(1)一時保護期間の早期終了を目指せる
児童相談所での一時保護は原則として2か月の措置です。しかし調査の結果によっては保護期間の延長や、児童養護施設への入所となる可能性があります。
弁護士が関与することで、事実関係や改善状況を整理し、不要な長期化を防ぐための意見書提出や交渉が可能になります。 -
(2)家庭復帰のための円滑な話し合いをサポート
児童相談所との面談や説明は専門的な内容が多く、理解できないまま話が進んでしまい、保護者が不利な立場に置かれてしまうこともあります。
弁護士が同席・助言することで、冷静かつ適切な対応が可能となり、誤解や行き違いを防ぐことができます。
また、家庭復帰には、生活環境の改善や再発防止策が求められます。
弁護士は、福祉機関や支援制度を踏まえた具体的な改善策を整理し、児童相談所との協議をサポートします。 -
(3)家庭裁判所(28条審判手続き)への移行もスムーズ
一時保護が長期化する場合や、家庭裁判所の28条審判に移行する場合には、法的知識が不可欠です。
早めに弁護士が介入することによって、これまでの経緯や保護者の対応状況、改善に向けた取り組みを整理し、意見書の作成や手続対応を通じて、保護者の権利を適切に主張します。 -
(4)児童虐待の事実があった場合もアドバイスが可能
過去に不適切な対応があった場合、一時保護の即時解除は難しいかもしれません。
しかし、児童相談所に改善状況や再発防止策を訴えることによって、前向きな印象を与えることはできます。
ベリーベスト法律事務所は、児童相談所の一時保護に関する専門チームの弁護士が、事実関係や状況を踏まえ、再発防止と家族再建に向けたサポートを行います。
児童相談所の一時保護でお困りでしたら、べリーベスト法律事務所にご相談ください。
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