「一時保護の司法審査」とは? 手続きの流れと保護者の対応を解説

更新日:2026年10月01日
 公開日:2026年10月01日
「一時保護の司法審査」とは? 手続きの流れと保護者の対応を解説

令和7年6月1日から、児童相談所(児相)などによる一時保護について司法審査を行う制度が導入されました。

従来は児童相談所長や都道府県知事だけの判断で一時保護が行われていました。しかしこの制度の導入により、保護者の立場からみれば、一時保護に納得できない場合に、その判断を裁判官にチェックしてもらえるという側面が生まれました。

本コラムでは、実際に多い事後請求を中心に、制度のしくみと手続きの流れ、保護者がとるべき対応まで、ベリーベスト法律事務所の弁護士が図表を交えて解説します。

1、一時保護の司法審査とは|保護者にとって有利? 不利?

児童相談所が行う「一時保護」について、令和7年6月1日から司法審査を行う制度が開始され、一時保護の適法性を裁判官が審査することになりました。

  1. (1)一時保護とは

    「一時保護」とは、児童虐待のおそれがある場合などにおいて、児童相談所長、または都道府県知事からの指示を受けた児童相談所長が児童(=18歳未満の者)を一時的に保護することをいいます(児童福祉法第33条)。

    一時保護の目的は、児童の安全を迅速に確保して適切な保護を図ること、または児童の心身の状況やその置かれている環境などを把握することにあります。

    そのため、一時保護は保護者の同意がなくても行えます。また、児童相談所長などから委託を受けた者が保護を行うこともあります(児童福祉法第33条第1項・第2項)。

  2. (2)【令和7年6月施行】一時保護の司法審査とは

    従来は、児童相談所長または都道府県知事の判断のみで、一時保護を行うことが認められていました。

    しかし一時保護は、行政側の判断によって親子を強制的に分離させ、子どもの行動を制限する重大なものです。そのため、一時保護に関する手続きを適正に行い、その透明性を確保することの必要性が指摘されていました。

    そこで令和7年6月1日より、裁判官による一時保護の司法審査が導入されました。

    児童相談所長または都道府県知事は、原則として一時保護を開始した日から起算して7日以内に、その必要性が認められる資料を添えて、家庭裁判所に「一時保護状」を請求しなければなりません(児童福祉法第33条第3項)。

    詳しくは、2章「一時保護開始から裁判官の審査まで|流れと注意すべきポイント」で解説します。

  3. (3)一時保護の司法審査の内容

    裁判官による司法審査では、一時保護の要件を満たしているかどうかが審査されます。

    令和7年6月1日以降、一時保護の要件は2つに整理されています。

    ひとつは、次の①~⑦のいずれかにあてはまることになります。
    もうひとつは、児童相談所長などが一時保護の必要があると認めることです(児童福祉法第33条第1項、児童福祉法施行規則第35条の3)。

    【一時保護の要件】

    ① ・(過去に)児童虐待を受けた場合またはそのおそれがある場合
    ・(これから)児童虐待を受けるおそれがある場合
    ② 警察官から次の送致または通告を受けた場合
    ・14歳未満の者(少年)がした刑罰法令に触れる行為の送致
    ・要保護児童の通告
    ・児童虐待を受けたと思われる児童の通告
    ③ 児童の行動が次のいずれかに該当する場合
    ・(過去に)自己または他人の生命、身体、財産に危害を生じさせた場合、またはそのおそれがある場合
    ・(これから)自己または他人の生命、身体、財産に危害を生じさせるおそれがある場合
    ④ ・児童が自らの保護を求め、またはこれに相当する意見・意向を表明した場合
    ⑤ 次のいずれかに該当する場合
    ・児童に保護者もしくは住居がない、またはそのおそれがある場合
    ・児童の住居が不明である、または不明となるおそれがある場合
    ⑥ ・保護者が、監護している子どもの保護を求めた、またはこれに相当する意見を示した場合
    ⑦ ①~⑥のほか、一時保護を行わなければ児童の生命・心身に重大な危害が生じるおそれがある場合

    裁判官は、上記①~⑦のいずれかに該当すると認めるときは、一時保護状を発付します。ただし、明らかに一時保護の必要がないと認めるときは、例外的に一時保護状が発付されません。

  4. (4)一時保護の司法審査により保護者が受ける影響

    令和7年6月1日から施行された法令改正により、一時保護の要件が明確になるとともに、裁判所によるチェックが働くようになりました。

    児童相談所には、できる限り保護者の意見を聴き取ったうえで、その内容をまとめた書面を、一時保護状を請求する際に裁判所へ提出することが求められています。

    保護者としては、一時保護に納得できない場合に、その意見を裁判官に届ける道が開かれた点で、以前より意見を反映させやすくなったといえます。

    ただし、裁判官は児童相談所長などによる一時保護の必要性の判断を尊重するものとされており、保護者が一時保護解除を求めれば必ず一時保護が解除されるわけではありません。

2、一時保護開始から裁判官の審査まで|流れと注意すべきポイント

司法審査は多くの場合、実際に一時保護がなされたあとに行われます(事後請求)。
一時保護がなされたあとに行われる司法審査の手続きについて、ポイントを解説します。

  1. (1)一時保護の開始

    児童相談所長または都道府県知事の指示により、子どもの一時保護が開始されます。

    子どもが滞在するのは、児童相談所内にある一時保護所か、または児童養護施設・里親などの委託先に滞在します。一時保護の期間は原則として2か月以内ですが、一時保護が行われた児童については満20歳に達するまでの間、特定の措置をとることにより、さらに延長されることもあります(児童福祉法第33条第12項~第17項)。

    一時保護が始まると、児童相談所から保護者に対して、一時保護に同意するかどうかの確認があります。ここで同意すると一時保護状の請求自体が不要になり、裁判官が審査する機会もなくなります(児童福祉法第33条第3項第1号)。

    同意するかどうかは、その後の手続き全体を左右する判断です。保護者としては、一時保護が開始された直後の段階から弁護士に相談して、その後の対応を迅速に検討することが大切です。

    弁護士に相談することにより、同意した場合としなかった場合で何が変わるのかを整理したうえで判断でき、児童相談所に伝える意見の内容もあわせて検討できます。なお、一時保護に同意しないこと自体を理由に不利に扱われることはないとされています。

  2. (2)一時保護状の請求・発付

    児童相談所長または都道府県知事が子どもの一時保護を行うときは、原則として一時保護を開始した日から起算して7日以内に、一時保護の必要があると認められる資料を添えて、裁判官に対して一時保護状を請求しなければなりません。

    裁判官は、一時保護の要件を満たしているかどうかを審査し、満たしていると判断すれば一時保護状を発付します。

    一時保護の要件を満たしていないと判断したときは、裁判官は一時保護状の請求を却下します。

    一時保護状の請求にあたり、児童相談所長または都道府県知事には、できる限り保護者の意見を聴取したうえで、その内容をまとめた意見書を裁判所に提出することが求められます。

    保護者が自分で意見書面を作り、児童相談所に提出することも可能です。ただし、児童相談所は請求を予定している日から逆算して提出期限を決めるため、準備にかけられる時間は長くありません。期限までに提出がなければ、意見書面を待たずに請求が行われます。

    意見書面の具体的な届け方は、3章「保護者の意見を届ける方法|裁判官への意見書」で詳しく解説します。

    なお例外的に、次に掲げる場合には、一時保護状の請求が不要とされています(同項各号)。

    • ① 一時保護を行うことについて、親権者または未成年後見人の同意がある場合
    • ② 親権者または未成年後見人がいない場合
    • ③ 開始日から起算して7日以内に一時保護を解除した場合
  3. (3)【一時保護状の請求が却下された場合】児童相談所による取消請求

    裁判官が一時保護状の請求を却下した場合において、一時保護を行わなければ子どもの生命・心身に重大な危害が生じると見込まれるときは、児童相談所長または都道府県知事は裁判所に対し、一時保護状の請求を却下した旨を取り消すよう裁判所に請求できます(児童福祉法第33条第7項ただし書)。

    取り消しを請求できるのは、却下の裁判があった日の翌日から起算して3日以内です。

    この取消請求では、当初の請求時に提出された資料に加えて、一時保護が始まったあとに判明した事実や資料も判断材料になります。児童相談所が主張を補う場面になります。

    保護者としては、新たに持ち出された事情に事実と異なる点があれば、それを児童相談所に伝え、提出資料に反映されるよう求める等の対応を検討したほうがよいでしょう。

  4. (4)一時保護の継続・解除

    裁判官によって一時保護状が発付されたときは、子どもの一時保護が継続されます。

    他方で、裁判官が一時保護状の請求を却下したときは、児童相談所長または都道府県知事は原則として、速やかに一時保護を解除しなければなりません(児童福祉法第33条第7項)。

    ただし、却下決定の取り消しを請求された場合は、一時保護状の請求についての裁判が確定するまでの間、一時保護を継続することが認められています(同条第9項)。

    子どもを一日も早く家に帰したいなら、裁判官に対して一時保護の要件を満たしていない旨を説得的に訴えることが求められます。

    なお、一時保護状が発付された場合でも、そこで手続きが終わるわけではありません。一時保護が2か月を超えて続くことが親権者などの意に反する場合、児童相談所長または都道府県知事は家庭裁判所の承認を得なければなりません(児童福祉法第33条第14項)。

    弁護士に依頼すれば、解除に向けた児童相談所との協議を続けながら、家庭裁判所の手続きに向けた準備を並行して進められます。

3、保護者の意見を届ける方法|裁判所への意見書の提出

一時保護に関する司法審査において、裁判官に保護者の意見を伝えるためには、保護者側で意見書を作成し、児童相談所に提出します。提出した意見書は、児童相談所が一時保護状を請求する際に、裁判官へ提出されることになります。

児童相談所側にも保護者の意見をできる限り聴くことが求められていますが、その内容を適切にまとめた書面などが作成されるとは限りません。保護者としては、自分の言葉で表明した意見を裁判官に伝えることが望ましいでしょう。

弁護士と協力すれば、事実関係や家庭の状況、さらには法律上の要件を踏まえたうえで、裁判官に伝えるべき内容を適切にまとめることができます。早い段階から弁護士に相談して、意見書の作成などの準備に取り組みましょう。

4、子どもを早く取り戻すために保護者が今すぐとるべき行動

必要がないのに一時保護された子どもを早く帰宅させるためには、法律上の要件に沿って事実関係を検討することが大切です。

  • 感情的にならず、児童相談所の説明を落ち着いて聞き、記録に残す
  • 一時保護の理由として説明された内容(要件のどれにあたるとされているか)を確認する
  • その理由に対して、事実関係がどう違うのかを時系列で整理する
  • 家庭の状況を裏付ける資料(通院記録、学校とのやり取りなど)を集める
  • 意見書にまとめ、児童相談所に提出する

そのうえで、一時保護の要件を欠いていることを資料に基づき説得的に主張しましょう。

保護者ご自身だけで、児童相談所とのやり取りや司法審査への対応などを行うことには限界があります。弁護士と協力することで早期解決につながる可能性がありますので、子どもが一時保護されたらすぐに弁護士へご相談ください。

5、児童相談所問題は弁護士に相談を!

令和7年6月1日から始まった司法審査は、不必要な一時保護に対して保護者が意見を述べる機会として役立つ制度です。児童相談所を通じて裁判官に対して意見書を提出することにより、一時保護状請求を却下するよう求められるようになりました。

弁護士は、一時保護に同意するかどうかの判断、児童相談所とのやり取りや、解除に向けた協議まで、保護者の方をサポートすることが可能です。2か月を超えて一時保護が続く場合の家庭裁判所の手続きにも対応します。

ベリーベスト法律事務所には、児童相談所問題について知見を有する弁護士が在籍しております。お子さまが一時保護をされてお困りの方は、ぜひお早めにご相談ください。

この記事の監修
ベリーベスト法律事務所 
Verybest Law Offices
所在地
〒106-0032
東京都港区六本木一丁目8番7号 MFPR六本木麻布台ビル11階 (東京オフィス)
設立
2010年12月16日
連絡先
[代表電話] 03-6234-1585 
[ご相談窓口] 0120-541-071
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